高等学校における道徳教育の充実に向けて(文部科学省初等中等教育局 教育課程課 教科調査官 飯塚秀彦):校内研修シリーズ№81
Summary
TLDRこのビデオスクリプトでは、文部科学省の飯塚秀彦が高等学校における道徳教育の充実をめぐる講演を行っています。高校生が主体的に判断し、自立した人間として生きるための道徳性を養うことが目標とされています。校訓や学校教育目標を活用し、全教師が協力して道徳教育を展開することが重要です。また、生徒が人間としての在り方生き方を考える機会を設けることがポイントで、特別活動や公民科の「倫理」を通じて、生徒が自己実現や社会参画の力を育むことが求められています。
Takeaways
- 🏫 高等学校における道徳教育は、特別な教科として設定されていなくても、人間として大切なことを意識しながら行われています。
- 👨🏫 高校の先生方は、道徳教育という言葉を意識しながらも、日常の教育活動で道徳教育に取り組んでいます。
- 📋 高等学校の道徳教育は、学校教育活動全体を通じて、各教科や特別活動に応じて適切に指導することが求められています。
- 🎯 高校の道徳教育の目標は、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共に良い関係を築くための道徳性を養うことです。
- 📝 道徳教育の全体計画を作成し、校長の下で全教師が協力して道徳教育を展開することが重要です。
- 🔍 道徳教育推進教師が、学校の道徳教育を組織的に推進し、コーディネートする役割を担うことが必要です。
- 👥 高校では、特別な教科ではなく、公民科の「公共」や「倫理」、特別活動が人間としての在り方に関する指導の場を提供しています。
- 🤔 高校生は、多様な選択と判断を迫られる状況で、主体的に選択し、より良い生き方を選ぶ能力を身につけることが求められます。
- 📚 公民科の「倫理」科目は、人間としての在り方生き方を深く思索するための重要な科目です。
- 💡 特別活動に道徳教育の視点を加えることで、生徒が人間としての在り方について考える機会を設けることができます。
- 📈 特別活動における学習過程に「振り返り」の場面を加えることで、道徳教育の充実を促進することができます。
Q & A
このビデオスクリプトは誰にとって役立つでしょうか?
-このビデオスクリプトは主に高等学校の教師や教育関係者にとって役立つでしょう。特に、道徳教育の充実を推進する方針や実践について考えている教育者に対しては特に有用です。
高等学校における道徳教育の概要について説明してください。
-高等学校の道徳教育は「人間としての在り方生き方に関する教育」と位置付けられており、学校教育活動全体を通じて行われます。各教科・科目、総合的な探究の時間、特別活動などでそれぞれの特質に応じて指導が行われることが求められています。
高等学校の道徳教育に設定されている目標は何ですか?
-高等学校の道徳教育の目標は、生徒が主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共に良い関係を築き、生きるための基盤となる道徳性を養うことです。
高等学校で道徳教育を推進するためにはどのような方針が提唱されていますか?
-高等学校で道徳教育を推進するためには、学校の教育活動全体を通じて全教師が協力して道徳教育を展開することが提唱されています。また、生徒が人間としての在り方生き方を考える機会を設けることが重要です。
道徳教育の全体計画を作成する際の出発点は何ですか?
-道徳教育の全体計画を作成する際の出発点は、校訓や学校教育目標です。これらの原則に基づいて、道徳教育の重点目標や指導方針が定められ、各教科・科目、特別活動での道徳教育が展開される構造を作ります。
高等学校の校訓や学校教育目標はどのように道徳教育に活用されるべきですか?
-高等学校の校訓や学校教育目標は、教師の日々の指導をつなぐための重要な要素として活用されるべきです。校訓や目標に含まれる道徳的価値を具体的に実践することで、生徒に向けた道徳教育の第一歩を踏み出すことができます。
特別活動において生徒が人間としての在り方生き方を考える機会を設けることがなぜ重要ですか?
-特別活動において生徒が人間としての在り方生き方を考える機会を設けることが重要であるのは、高校生が様々な選択と判断を迫られる状況で主体的に選択・判断し、より良い生き方を選ぶ能力を養うためです。
特別活動に道徳教育の視点を加える「チョイ足し」とはどのような方法ですか?
-特別活動に道徳教育の視点を加える「チョイ足し」とは、既存の活動に道徳教育の要素を取り入れる方法です。例えば、外部講師の講話の後に、校訓や学校教育目標に関連する視点で生徒が感想や反思を深める機会を設けることが挙げられます。
ワークシートを使用して特別活動に道徳教育の視点を加える方法はどうですか?
-ワークシートを使用することで、生徒が講話の内容を自分事として捉え、校訓や学校教育目標に関連する視点で振り返り、多角的な意見を持つことができるように導くことができます。これにより、生徒は自分の生き方や在り方について深く考え、友達との意見交換の機会を得られます。
このビデオスクリプトで強調されている道徳教育のポイントとは何ですか?
-このビデオスクリプトで強調されている道徳教育のポイントは、学校教育活動全体を通じて全教師が協力して道徳教育を展開し、生徒が人間としての在り方生き方を考える機会を設けることが重要であるということです。
Outlines
📚 高等学校の道徳教育概要
この段落では、文部科学省の飯塚秀彦が高等学校における道徳教育の充実をめぐる議論を開始しています。高校には特別の道徳教科が設定されていないにもかかわらず、先生方は日常的に生徒に「人間として大切なこと」を伝えています。しかし、高校での道徳教育は意識されずにバラバラに行われているという問題があります。高校の道徳教育は「人間としての在り方生き方に関する教育」と位置付けられており、学習指導要領本則に基づいて全教科で推進されるべきだと述べています。また、道徳教育の目標は小中高校で共通で、主体的な判断の下で行動し、自立した人間として他者と共に生きるための基盤となる道徳性を養うことが挙げられます。
🏫 学校教育活動全体における道徳教育の推進
第二段落では、高校における道徳教育の推進方法について詳しく説明しています。校訓や学校教育目標を活用し、全教師が協力して道徳教育を展開することが重要です。道徳教育の全体計画は校訓や学校教育目標に基づいて作成され、各教科や特別活動で道徳教育が行われることが期待されています。また、高校の教職員は多くなるため、校訓や学校教育目標を通じて日々の教育活動をつなげることが求められています。具体的な提案として、校内研修の際に生徒に対して伝えるべき人間として大切なことをピックアップし、校訓や学校教育目標と関連する実践を共有することが挙げられます。
🤔 生徒が生き方について考える機会の設立
第三段落では、生徒が人間としての生き方を考える機会を設けることが道徳教育のポイントとされています。高校生は様々な選択や判断を迫られる状況に直面しており、主体的に選択・判断し、よりよい生き方を選ぶことができるようにすることが重要です。公民科の「倫理」科目は、生徒が自らの生き方を思索する典型的な場です。また、特別活動においても道徳教育の視点を加えることで、生徒が自分の生き方についてじっくりと考える機会を提供することが提案されています。
📈 特別活動における道徳教育の充実
第四段落では、特別活動を通じて道徳教育をさらに充実させる方法が提案されています。特別活動においては、自己実現、人間関係形成、社会参画の3つの視点から生徒の資質・能力を育成することが重要です。これらの視点は相互に関連し、共に育成されるべきだと述べています。また、特別活動における学習過程には、問題の発見・確認、話し合い、解決方法の決定、実践、振り返りが含まれることが想定されています。しかし、実際にはこの学習過程が実践されることは多くないため、既存の活動に「振り返り」の場面を加えることで、道徳教育の視点を加え、生徒が自分の生き方について考える機会を提供することが求められています。
📝 ワークシートを用いた生徒の自己反映と意見交換
第五段落では、ワークシートを利用して生徒が社会人講話などの特別活動を通じて自己反映し、意見交換を行うことが提案されています。ワークシートには、校訓や学校教育目標に関連する視点から講話内容を振り返る項目が盛り込まれ、生徒が自分自身の生き方や在り方について考える機会を提供します。また、生徒同士が考えを共有し、多角的な視点から議論する場を設けることが重要です。このようにして、生徒は人間としての生き方についての考えを深め、道徳的な判断力や実践意欲を育むことが期待されています。
🌟 道徳教育の推進と充実への期待
最後の段落では、これまでの議論を総括し、高校生が人間としての生き方についてじっくりと考え、友達と意見交換する機会を設けることが重要であると強調しています。大人でもこのような機会は少なく、高校生にとっては特に重要です。ビデオの内容を参考に、自校の校訓や学校教育目標を軸として、先生方の日々の実践をつなげ、生徒が人間としての生き方について考える場面を設けることで、道徳教育の推進と充実を目指すよう期待しています。
Mindmap
Keywords
💡道徳教育
💡人間としての在り方生き方
💡校訓・学校教育目標
💡特別活動
💡倫理
💡自己実現
💡人間関係形成
💡社会参画
💡振り返り
💡ワークシート
Highlights
文部科学省初等中等教育局の飯塚秀彦が高等学校の道徳教育について解説。
高等学校には特別な「道徳」教科はなく、道徳教育の推進方法が異なる。
高校の先生方は日常的に道徳教育に取り組んでいるが、意識していないことが多い。
高等学校学習指導要領本則における道徳教育の概要と目標が説明されている。
道徳教育は人間としての在り方生き方に関する教育として位置づけられ、全教科にわたって展開される。
小学校、中学校、高等学校の道徳教育目標は共通の基盤を持つ。
道徳教育の全体計画を作成し、校長の下で全教師が協力して展開することが求められている。
道徳教育推進教師が学校の道徳教育をコーディネートする重要な役割を果たす。
公民科の「公共」、「倫理」科目が道徳教育の核となる。
特別活動が人間としての在り方生き方に関する指導の場面として位置づけられている。
高校の教育活動全体を通じて教師が協力して道徳教育を展開することが重要。
校訓や学校教育目標を活用して道徳教育の全体計画を作成することが提案されている。
生徒が人間としての在り方生き方を考える機会を設けることが道徳教育のポイント。
「倫理」科目は生徒が自らの在り方生き方を思索する契機を提供する。
特別活動に道徳教育の視点を加えることで、高校の道徳教育をさらに進化させる。
生徒に自分の生き方在り方についてじっくり考える場面を設けることが提案されている。
特別活動における学習過程に「振り返り」の場面を加えることで道徳教育を強化するアイデア。
ワークシートの作成や外部講師の講話の活用が生徒の自己実現に寄与する。
生徒が人間としての生き方について友達と意見交換する場を設けることが重要。
小学校、中学校の「特別の教科 道徳」の目標を参考に、高校の道徳教育を充実させる提案。
高校生にとって、人間としての生き方についての考えや意見交換の機会が重要である。
Transcripts
皆さん こんにちは 私は 文部科学省 初等中等教育局 教育課程課で
中学校及び高等学校の道徳教育 高等学校公民科「倫理」を 担当しております 教科調査官の飯塚 秀彦です
この動画は「高等学校における道徳教育の充実に向けて」と題して
小中学校のように「特別の教科 道徳」が設定されていない高等学校で
どのように道徳教育を推進 充実させていくかのポイントについて お話ししたいと思います
さて 突然ですが 「貴校では日常的にどのような道徳教育を行っていますか?」
「貴校では日常的にどのような道徳教育を行っていますか?」 と問われると 戸惑われたり
「していないな」とお感じになるかもしれません しかし 例えば先生方も担任として 部活動の顧問として あるいは 様々な生徒とのかかわりの中で
生徒の皆さんに「人間として大切なこと」を話したり 考えさせたりしていると思います
そうです 高校の先生方も「道徳教育」と意識していなくても 普段から「人間として大切なこと」として「道徳教育」に取り組まれています
ただ 高等学校における「道徳教育」の問題は 先生方が「道徳教育」とは意識しないまま それぞれが個々バラバラに行っているということです
本研修は ご覧の3点についてお話しいたします
まず「高等学校における道徳教育の概要」についてです
これは 高等学校学習指導要領本則における道徳教育に関する記述です
青字と赤字の部分について注目していただきたいのですが 高等学校では道徳教育を「人間としての在り方生き方に関する教育」 と言い換えており
学校の教育活動を全体を通じて つまり 各教科・科目 総合的な探究の時間
特別活動等で それぞれの特質に応じて 適切に指導を行うものとされています なお 小中学校では「特別の教科 道徳」があり
小中学校では「特別の教科 道徳」を要として 学校の教育活動全体で道徳教育を行うこととなっています
高等学校における道徳教育の目標は 第三段落の部分で示されています 下線部分の「主体的な判断の下に行動し 自立した人間として他者と共によりよく
生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とする」という部分については 小学校 中学校 高等学校で共通の部分となります
こちらは 道徳教育に関する配慮事項についての記述です
やはり 青字と赤字の部分に注目していただきたいのですが 学校で道徳教育を行うにあたっては「道徳教育の全体計画を作成し」
「校長の方針の下に」「全教師が協力して道徳教育を展開すること」 とされています
この際 学校における道徳教育を組織としてどのように推進していくのかを
いわばコーディネートするのが 道徳教育推進教師ということになります
また 高等学校における 小中学校のように「特別の教科 道徳」はありません しかし 新学習指導要領では 公民科の「公共」
「倫理」 特別活動が「人間としての在り方生き方に関する
中核的な指導の場面」であるとされています 現行の学習指導要領でも 学習指導要領の総則の解説に
「現代社会」「倫理」及び特別活動が 同様に中核的な指導の場面とされています
本研修の後半では すべての先生方が関わる特別活動にポイントを絞って お話ししたいと思います
高等学校における道徳教育について 学習指導要領本則での記述について見てきましたが ポイントはこの2点
ということになります ・学校の教育活動を全体を通じて 全教師が協力して道徳教育を展開する
・生徒が人間としての在り方生き方を考える機会を設ける この2点について さらにお話ししたいと思います
では「学校の教育活動の全体を通じて 教師が協力して道徳教育を展開する」 について 校訓・学校教育目標を活かすという点からお話ししたいと思います
皆さんの学校でも 道徳教育の全体計画を作成していると思いますが すべての先生に周知されているでしょうか
さらに 周知されると共に 全体計画に基づいた実践がなされているでしょうか 残念ながら 学校によっては
作成してはいるものの 先生方に周知されていないという状況もあるようです
このような状況を改善し 「学校の教育活動の全体を通じて 全教師が協力して道徳教育を展開する」
そのための方策の第一歩として 自校の校訓または学校教育目標を踏まえて 道徳教育を展開することが考えられます 道徳教育の全体計画ですが 特定の形式はありませんが
一般的にこのような構造で作成されることが多いようです 道徳教育の全体計画を作成する際
その出発点になるのが 校訓や学校教育目標ということになります
そこから派生して 道徳教育の重点目標や指導方針などが中央に記載され
ここが道徳教育の軸 柱になります
この道徳教育の軸から 各教科・科目 総合的な探究の時間や特別活動 特色ある行事における道徳教育が派生するという構造になっています
つまり スタートは 校訓・学校教育目標であるということです
ところで 先生方が勤務されている学校の校訓や
学校教育目標はどのようなものでしょうか また その校訓や学校教育目標は
日々の教育活動の中で具体化され 先生方によって実践されているでしょうか
高等学校は教科担任制であり また 小中学校と比べると規模が大きく 教職員の数も格段に多いと思います
したがって 高等学校では特に 先生方をどうつないでいくかということが重要で 校訓や学校教育目標によって
先生方の日々の教育をつないでいくということが大事です こちらをご覧ください
これは 複数の高等学校の校訓や学校教育目標です
ご覧になって どのようなことをお感じになるでしょうか どれも人間として大切なこと
つまり 多くの道徳的価値が含まれていますよね 皆さんの学校の校訓や学校教育目標
多くの場合は複数あると思いますが その中にはこれらと同じように 必ず人間として大切なことが含まれているはずです
校訓などは 石に刻まれていたり 額に掲げられたりしていますが それだけでは まさに絵に描いた餅です
人間として大切なことが含まれる校訓や学校教育目標によって 先生方の日々の指導をつないでいく
このことが高等学校における道徳教育を推進 充実していくことにつながっていきます
そこで一つ提案です 最初にも申し上げましたが 普段から生徒に対して 人間として大切なことを 生徒に伝えたり考えたりする機会を作っていると思います
それらを 例えば 校内研修の機会などで付箋紙に書き出し
校訓や学校教育目標と関連する実践をピックアップし共有します さらに
それらの中から共通実践できそうなものを複数選び すべての教職員がそのうち一つ以上を実践する という方法も考えられるかもしれません
新しいことをするのではなく 日々 先生方が実践されていることを 校訓や学校教育目標によって
つなげ 共通実践していく
このことで 自校の道徳教育の第一歩としていただきたいと思います
次に 高等学校における道徳教育のポイントの 「生徒が人間としての在り方生き方を考える機会を設ける」ということについて
「チョイ足しによる道徳教育の推進」という点からお話ししたいと思います
「人間としての在り方生き方」ということについて説明をします
皆さんは いま住む場所を選ぶとしたら この写真のような都市部のウォーターフロントの タワーマンションを選びますか?
あるいは この写真のように地方の山間の小川が流れている のどかな場所を選びますか?
交通機関も発達し 買い物をするにも 文化的な施設を利用するにも 大変便利な都会で生きていく
あるいは 都会の喧噪を離れ 不便なところはあっても それを補って余りある大自然の中で ゆったりとした人生を過ごす
つまり これらは選択した人の生き方ということになります さらに考えてみると なぜこのように生き方の違いが生じるのかということです
それは 選択する人の「自分自身に固有な選択基準 ないし 判断基準」
あるいは「人生観 世界観 ないしは 価値観」 といった人間としての在り方が関わってくるわけです
つまり 高等学校における道徳教育のポイントは 様々に選択・判断を迫られる状況で
生徒が主体的に選択・判断し よりよい生き方を選ぶことができるようにするための 人間としての
在り方生き方を考えることにあるのです このような高校における道徳教育
すなわち 人間としての在り方生き方の教育の典型は 公民科の「倫理」という科目になります 「倫理」はご存知のように 人間としての在り方生き方を深く思索した
先哲の思想を手掛かりとして 生徒が自らの在り方生き方を思索する科目です 現行の学習指導要領の「現代社会」
新学習指導要領の公民科の共通必履修科目「公共」にも 人間としての在り方生き方について考える内容が含まれています
ただ これらの科目は主に公民科を担当する先生方によって担われますので ここでの話は 全ての先生方が何らかの形で関わる
同じく人間としての在り方生き方を考える 高等学校における道徳教育の中核的な指導の場面とされる特別活動について
現在各学校で行われている特別活動に道徳教育の視点を付け加える
つまり チョイ足しすることで 高校における道徳教育をさらに一歩進めていただきたいと考えています
いま お話ししました「人間としての在り方生き方」についての 高等学校学習指導要領総則の解説の記述です
青字と赤字の部分がポイントとなる部分です
高校生にとっての卒業後の進路は 自身の人生に とても大きな影響を与える選択になります
また 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ また 令和4年4月1日から成年年齢も18歳に引き下げられます
つまり 高校3年生の中には 選挙権を有し 親の同意を得ずに契約を結べる生徒がいるということです
キャリア教育や消費者教育の充実に向け 各学校でも様々に取り組まれているとは思いますが どちらかというとより実践的な部分に重きが置かれ
自分自身の生き方や在り方についてじっくり考えたり 生徒同士が対話したりする場面は まだまだ少ないのではないでしょうか
先生方も 生徒が自分の生き方在り方について じっくり考える場面が必要だと思われていても なかなか その時間が取れないと悩まれているかもしれません
生徒に自分の在り方生き方について じっくり考える機会をぜひつくってほしいと思います そのために
新しい何かを大々的に行うのではなく 現在行なっている 特に特別活動において取り組まれている活動に 道徳教育の視点を
チョイ足しすることで 少しでも生徒に自分の在り方について 考える機会をつくってほしいという提案をしたいと思います
特別活動で育成すべき資質・能力は「自己実現」
「人間関係形成」「社会参画」の三つの視点によって整理されています
まず「自己実現」という視点です これは「集団の中で自己の生活の課題を発見し よりよく改善する力や
自己の理解を深め 自己のよさや可能性を生かす力
自己の在り方生き方を考え設計する力」とされ 集団の中において 個々人が共通して 当面する 現在及び将来に関わる問題を考察する中で
育まれるものと考えられます
次に「人間関係形成」という視点です
これは「集団の中で よりよい人間関係を自主的 実践的に形成する力」とされ 「集団の中において 個人対個人という関係性の中で育まれるものと考えられます
三つ目は「社会参画」という視点です 「これはよりよい学級(ホームルーム)・
学校生活づくりなど 集団や社会に参画する力 及び 諸問題を解決しようとする力」とされ
「集団の中において 個人が集団へ寄与する中で育まれるもの」と考えられます
これら三つの視点は 当然のことながら バラバラに育成されるものではなく
相互に関連させながら 育成をすべきものとなります
次に 特別活動における学習過程について説明します これは 特別活動における学級活動・ホームルーム活動の学習過程のイメージですが
よりよいホームルームを作ることに向けて ホームルーム内の諸問題の発見・確認から始まり
どのように解決したらよいかについて話し合い 解決方法を決め
決めたことを実践し そして振り返る というような学習過程が想定されています
しかし 実際にはこのような学習過程が実践されることは多くはないかもしれません いきなり このような学習過程を実践することは難しいかもしれませんので
既存の特別活動の取組に「振り返り」の場面をチョイ足しすることで
そして そこに 道徳教育の視点を加えることで
特別活動の充実 高校における道徳教育の充実に つなげていただきたいと考えています
例えば 外部講師による社会人講話を例として考えてみたいと思います 事前学習を行い 講話を聞き
事後学習というような学習過程が理想的ですが 場合によっては
講話を聞き 感想を書かせておしまい ということもあるかもしれません せっかく 外部の講師の貴重な話 そしてそれは講師の方の生き方にも関わるお話ですから
生徒も様々な気づきや感想をもつはずですが それを単に
感想を書かせておしまい にしてしまうのは 生徒が自身の在り方や生き方について考える機会としては大変もったいないことです
そこで こんな工夫が考えられると思います もし これまで単に感想を書かせていただけであったら 次のような項目を盛り込んだ
ワークシートをつくってはどうでしょうか まず 振り返らせる内容を焦点化させます
外部講師の方のお話は様々な視点から考えることができると思いますが 初めにもお話ししたように
ここでも 校訓や学校教育目標を視点として振り返らせることにするわけです
校訓や学校教育目標と関わる振り返りの視点 あるいは「問い」を設定し 社会人講話の内容を
生徒に振り返らせます その際
事前に「今回の社会人講話は こういったことがポイントとなる」
というようなことを生徒に示す必要があります 事前学習として時間が取れなければ 朝や帰りのショートホームルームなどで示すだけでも
よいと思いますが 生徒に意識付けをすることは とても重要です また 講話の内容を自分事として捉える項目も
ワークシートに盛り込んでください 例えば
自分にも講師の方と似たような決断を迫られる場面はあったか その時どのように考え どのような決断をしたのか
もし 将来自分が講師の方と同じ立場に立ったら どのように考え どのような決断をするだろうか
というような項目で 生徒に考えさせてほしいと思います
さらに 多面的・多角的に考えさせるという視点については
生徒の考えを共有する場面をつくるということで振り返らせてください 理想は テーマに沿って それぞれの考えを
意見交流させる時間を取ることですが できれば ワークシートを回収した後 他の生徒にも伝えたいというものをピックアップし
生徒に伝える機会をつくってください
ショートホームルームでもいいですし 学級通信や学年通信などでもよいと思います あるいは ICT を活用して生徒に伝えるようなシステムがあれば それを活用する
ことも考えられます いずれにしても
生徒は友達がどんなことを考えているかを知りたいと感じています なぜなら 進路選択など高校生にとっては「これが正解」 というものはありませんから
常に迷いの中にいます ですから 同世代の友達がどんなことを考えているのか どんなことで悩んでいるのかを
共有することが ある面では安心につながる場合もあるでしょうし ある面では勇気づけられたり 頑張っていこうと考える場合もあると思います
どのように生きて行くかというようなことは 普段なかなか友達と意見交流できない内容ですから
こういう機会に共有したり できれば意見交換をする場面を設定したりしてほしいと思います
このような活動で 生徒は様々なものの見方を学ぶことができます また
先生方自身の講話に対する考えなども率直に伝えるということも 生徒にとってはとてもよい刺激になります
人間の生き方に関わる事柄は 大人だからといって 「正解」がわかっているものではありません
大人だって 迷ったり考えたりしながら生きているんだということを 共有することは 生徒との信頼関係を築く上でも重要なことと考えます
これまでお話ししてきた 焦点化 自分事 多面的・多角的ということについては 実は小学校 中学校の「特別の教科 道徳」を参考にして
設定しています
これが 中学校の「特別の教科 道徳」の目標です 小学校も ほぼ同じ内容となっています
「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため 道徳的諸価値についての理解を基に
自己を見つめ 物事を広い視野から多面的・多角的に考え
人間としての生き方についての考えを深める学習を通して 道徳的な判断力 心情
実践意欲と態度を育てる」とされ 青字の部分が 児童生徒の道徳性を養うための道徳科の学習ということになります
「道徳的諸価値についての理解を基に」は人間として大切なこと つまり 道徳的価値が含まれる校訓や学校教育目標によって 焦点化するということです
「物事を広い視野から多面的・多角的に考え」は そのまま多面的・多角的に考える つまり 友達同士と意見交流をするということです
そして「自己を見つめ」「人間としての生き方を考える」が 自分事としてということになります
このように「特別の教科 道徳」の目標を踏まえながら 既存の特別活動にチョイ足しし
生徒が自身の人間としての在り方や生き方を考える場面をぜひ設定してください 私たち大人もそうですが
人間としての在り方や生き方については じっくり考えたり 他者と意見交流する機会は少ないと思います
しかし これから人生を本格的に歩み始める高校生にとって これらのことを考え
友達と意見交流する機会はとても重要です
本格的に新しいことをはじめることは難しくても 今回お話ししたような道徳科の学習を踏まえ
チョイ足しすることで 生徒の考える時間を少しでも確保していただきたいと思います
この動画の内容を参考にしていただき 自校の校訓や学校教育目標を軸として
先生方の日々の実践をつなげる 生徒が人間としての在り方や生き方を考える場面をチョイ足しするなど 自校の道徳教育推進
充実の第一歩としてほしいと思います
以上で私の講義は終わりにします
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