毒ガス「酸素」はどのように生まれたのか？

Geo Origin【ジオ・オリジン】

2 Nov 202315:24

Summary

TLDRこの動画は、24億年前の地球の酸素濃度が急増した大参加事件について解説しています。当時、シアノバクテリアが光合成を始め、酸素を大量に生成しました。この酸素が多くの生物に有害で有毒だったため、大量絶滅が起こりました。さらに、二酸化炭素の減少によって氷河期もあり、「スノーボールアース」と呼ばれる地球全体が凍結する事態にも至りました。私たち現代の人類も、地球環境に深刻な影響を与えているという警鐘も示されています。

Takeaways

🌍 地球上の酸素は、24億年前のバクテリア(シアノバクテリア)が光合成を始めたことにより急増した。
🔥 当時の酸素は生物にとって新しい物質であり、酸素に適応できなかった多くの生物が絶滅した。
🔬 ウィリアムバートが発見した赤と黒の層状の岩石は、酸素濃度の変化を記録している。
☠️ バクテリアが放出した酸素は大量の生物を窒息させ、史上最大規模の大量絶滅を引き起こした。
⛄ 大量の酸素放出により二酸化炭素などの温室効果ガスが減少し、スノーボールアース(全地球凍結)を引き起こした。
🌡️ スノーボールアースは、太陽光を必要とする生物に壊滅的な被害をもたらした。
🦖 生命が無事に生き延びたのは、深海域や温暖な海岸線のオアシスだけだった。
🌱 酸素は害となる物質から、現在のように生物に必須の物質へと転換を遂げた。
🐘 現代の動物や植物は、この大三化事件を生き延びた生物の子孫である。
🌍 人類も化学物質や有害廃棄物により地球環境を脅かしており、当時のバクテリアと似た存在になっている。

Q & A

24億年前の地球はどのような状況だったのですか?
-24億年前の地球は「原生代」と呼ばれ、生物はバクテリアのような微生物が主体でした。海底の熱水噴出口周辺にバクテリアが集まり、ミネラルを摂取していました。
バクテリアが行った進化的な変化は何ですか?
-バクテリアは遺伝子の突然変異によって、周辺環境に存在する化学物質を使った新しい代謝を始めました。具体的には、紫色のバクテリアが特定の波長の光を吸収して、新しいエネルギー源を利用し始めました。これが「光合成」の誕生です。
光合成がもたらした影響は何ですか?
-光合成によって、深海だけでなく浅瀬にも生命が広がり、生物の多様性が高まりました。また、活発な火山活動で陸地が増え、大陸の浅海に大規模なストロマトライト(シアノバクテリア類の死骸や泥などで作られる岩石の集合体)が形成されました。
光合成の初期段階にはどのような問題がありましたか?
-初期の光合成は、現在の多くの植物とは異なり、紫色のバクテリアが赤外線を吸収して、水から硫黄や硫化物を副産物として生み出していました。そのため、バクテリアが増えた場所は悪臭を放つ有毒な泥沼になっていました。
バクテリアによる光合成はどのように進化しましたか?
-バクテリアは遺伝子の突然変異を繰り返し、新しい代謝に改良を加えていきました。その結果、緑色の色素で赤色や青色の光を吸収する効率的な光合成が生み出されました。これは現在の植物にも受け継がれている代謝方法です。
この新しい光合成によってどのような問題が生じましたか?
-バクテリアの光合成は酸素を大量に生み出しました。当時の生物は酸素に耐性がなかったため、酸素は有害ガスとして作用し、多くの生物の絶滅を引き起こしました。これが「大酸化事変」と呼ばれる出来事です。
大酸化事変の証拠はどのように発見されたのですか?
-1844年にアメリカの測量師ウィリアム・バートが、五大湖のスペリオル湖周辺で鉄を30%以上含む鮮やかな赤と黒の層が交互に並んだ奇妙な岩石を発見しました。この層は、バクテリアによる光合成で作られた酸化鉄の堆積物だと分かりました。
大酸化事変によってどのような地球規模の影響が起きたのですか?
-バクテリアによる酸素の過剰生産は、地球全体の大気組成を大きく変え、世界中の海が酸素に満たされていきました。その結果、酸素に耐性のない多くの生物が絶滅しました。この事変は地球全体で2億年も続きました。
大酸化事変の影響でさらにどのような事態が起きたのですか?
-バクテリアが光合成で大量のCO2を消費したため、地球全体が寒冷化し「ヒューロン氷河期」と呼ばれる深刻な氷河期を迎えました。この時期、赤道近くまで地球が完全に氷に覆われる「スノーボールアース」現象が起きたと考えられています。
大酸化事変によって、地球の生命にはどのような影響がありましたか?
-この大酸化事変とその後の氷河期により、地球上の全生物の99.9%が失われたと推定されています。生き残ったのは深海や温暖な海岸線のオアシスの一部のみで、現在の生物はそこを生き延びた幸運な生物の子孫です。

Outlines

00:00

🌍 酸素が増大するきっかけになった大参加事件

地球の酸素は24億年前のシアノバクテリアの突然変異が原因で急増したと考えられている。シアノバクテリアは光合成の能力を得て酸素を副産物として排出したが、当時の生物にとって酸素は有毒ガスだったため、大量絶滅が起きた。バートは、酸化鉄の地層を発見し、バクテリアの酸素排出と生物の絶滅と回復を繰り返した歴史を裏付ける証拠とした。

05:01

🌊 大参加事件に伴う地球規模の環境変化

バクテリアが生成した酸素は海流に乗って地球規模に広がり、酸素に適応できない生物の絶滅を引き起こした。バクテリアの光合成により大気中の二酸化炭素が減少したことで地球は氷河期に入り、一時的に地球全体が凍結したスノーボールアースの状態になったと考えられている。赤道付近まで氷結したヒューロン氷河期には、地球の生命のほとんどが壊滅し、深海加熱環境や温暖な海岸線のオアシスでしか生存できなかった。

10:02

💥 大三化事件による壊滅的な生命体への影響

大参加事件の結果、地球の全生命体の99.9%が失われたと推定されている。深海加熱環境や温暖な海岸のオアシスで生き延びた一握りの生物だけが、後に酸素を利用するような現代の動物や植物へとつながっていった。シアノバクテリアは生命活動から有毒ガスを撒き散らし、地球環境を激変させ、ほとんどの生命を失わせてしまった。現代の人類も、同様に化学物質や汚染で環境を破壊し、世界中の生物を脅かしている点で似ている側面があるかもしれない。

15:04

🔚 おわりに

本動画ではシアノバクテリアの突然変異が起こした大参加事件について解説した。現世代のシアノバクテリアは光合成を生み出したが、酸素を副産物として排出したことで生態系を破壊し、自身の存続すら脅かす結果となった。現代の人類も同様に、環境への配慮を怠ると大きな損失を被る可能性がある。視聴者への呼びかけがあり、動画の終了が伝えられている。

Mindmap

Keywords

💡工合星

酸素を作り出す光合成の誕生を指します。原世代の紫色バクテリアが太陽光を吸収して新しいエネルギー源を利用し始め、これが光合成の始まりになったと説明されています。この光合成により酸素が初めて大量に生み出されるようになり、地球全体に酸素が放出されることとなります。

💡ストロマトライト

シアノバクテリア類の死骸や痕跡で形成される岩石の集合体のことです。原世代の浅い海に大規模なストロマトライトが形成され、そこに定着したシアノバクテリアが光合成を行うことで酸素を作り出していました。ストロマトライトは当時の酸素生産の現場を示す重要な証拠です。

💡大参加事件

原世代においてシアノバクテリアの光合成によって地球上の酸素濃度が大幅に上昇した一連の出来事を指します。24億年前から20億年前にかけて、バクテリアが放出した酸素に体性がなかった生物は窒息して大量に絶滅したため、地球の歴史上最大の大量絶滅が起こりました。この大三化事件は地球の環境を大きく変化させ、後の生物進化に大きな影響を与えました。

💡バート層

アメリカの測量師ウィリアム・バートが発見した鮮やかな赤と黒の層が交互に並んだ特徴的な地層のことです。これは原世代にシアノバクテリアの酸素と鉄が反応して作られた酸化鉄の層が、バクテリアの増減に伴って交互に堆積したものです。この地層は大三化事件が世界中で起きていたことを示す証拠となりました。

💡錆

鉄が酸素と結合して赤茶色に酸化した物質のことです。原世代の海で放出された酸素が水中に溶けた鉄と反応して作られた酸化鉄が錆である赤色の層を形成しました。この錆の層がその後バート層として発見されることとなります。

💡絶滅

生物種が地球上から完全に姿を消すこと。大三加事件によって放出された大量の酸素に耐性がなかった原世代の生物は酸素中毒になり、99.9%もの生物が絶滅したと推定されています。生命が僅かに残ったのは深海底や温暖な場所などの酸素の影響を受けにくかった一部の場所のみでした。この絶滅は、地球の歴史上最大規模のものです。

💡スノーボールアース

ジョセフ・カーシュヴィンクが唱えた仮説で、大三化事件の結果、地球温暖化の原因ガスが減少し過ぎたため、赤道付近を含む地球全体が凍結した状態になったと考えられています。このスノーボールアース時代には、地球全体が雪玉のように氷に覆われ、太陽光が必要な生物にとって壊滅的な環境となりました。

💡氷河期

地球の気候が寒冷化し、大陸上や低緯度地域まで氷が広がった時期のことです。大三化事件によって温室効果ガスが減少したため、地球が冷却して数度の氷河期を経験しました。その中で最も寒冷化が進んだのがヒューロン氷河期で、地球は完全にスノーボールのように凍結したと推定されています。

💡オアシス

ここでは地球規模の酸素汚染や氷結から逃れられた生命の避難場所を指しています。大三化事件の絶滅を生き延びた生物がわずかに残った場所は、深海底や温暖な海岸線などの酸素の影響を受けにくかったオアシスのようなごく一部の地域だけだったと述べられています。

💡地球環境

地球上で生物が生存するための大気、水、土壌などの総体的な環境のことです。大三化事件では酸素の放出や寒冷化による凍結で地球環境が激変し、生物に壊滅的な影響を与えました。一方、現代では人類による大気汚染や森林破壊が地球環境を脅かしており、世界中の生物に深刻な危機をもたらしていると述べられています。

Highlights

現在の地球で生きるほとんどの生物にとって酸素は欠かせない物質です。

地球の酸素は、24億年前のある出来事をきっかけに急増したことが明らかになっています。

この出来事は大酸化事件、大酸化事変、第3回酸化イベントなどと呼ばれています。

当時の生物にとって酸素は新しいものであり有毒だったため、酸素の大量発生に適応できず、非常に多くの生物が絶滅する結果となりました。

24億年前には原生代と呼ばれる時代で、バクテリアのような細菌や藍藻が主体でした。

紅色細菌とも呼ばれる藍藻のバクテリアが特定の波長の光を吸収して、全く新しいエネルギー源を利用し始めます。これが光合成の誕生です。

藍藻のバクテリアが持つ紫色の色素は太陽光に含まれる赤外線を吸収して、水に溶けている硫黄や硫化水素から硫黄や亜硫酸を副産物として生み出しました。

バクテリアが改良を重ねた結果、太陽光によって二酸化炭素 (CO2) と水が結合する光合成が生み出されました。

この新しい光合成では緑色の色素によって赤色や青色の光を吸収するため、それまで以上に多くのエネルギーが得られます。

この光合成は当時の生物にとって異変よりも致命的で、有害な老廃物を生み出しました。その有毒廃棄物こそが酸素なのです。

アメリカの測量師のウィリアムバートが1844年に五大子の1つであるスペリオル湖の荒野でコンパスの奇妙な動きを発見しました。

バートたちは鮮やかな赤と漆黒の層が交互に並んだ奇妙な岩石の地相を発見し、これらの岩石に鉄が30%以上含まれていることを明らかにしました。

これらの岩石は24億年前に原生代の海で作られたもので、バクテリアが酸素を作り出し、地球全体に酸素が放出されていたことを示しています。

バクテリアの個体がして酸素濃度がピークに達すると、酸素というハンデガスによってバクテリアは窒息して大量絶滅に至りました。

バートが見つけた島模様の鉄の地相はほぼ全ての大陸でも発見されています。

バクテリアが吐き出し続けた酸素は海流によって広がっていったため、世界中の海が水中に溶けた酸素で満たされていきました。

その結果、酸素に耐性のない多くの生物がガス中毒になって絶滅しました。

第3回酸化事件が原因で地球はもう1つ大きな事件に巻き込まれることになります。それは氷河期の到来です。

この時地球全体が氷河時代を迎えたとされていますが、その原因はシアノバクテリアが光合成によって大気中のCO2やメタンを大量に消費したことであると考えられています。

CO2濃度が下がりすぎてしまうと地球全体が寒冷化して氷河時代を迎えました。

22億年から23億年前に地球は何度か氷河期を経験していますが、最も厳しい時には赤道近くまで氷結していたと推定されています。

この氷河時代はヒューロン氷河期と呼ばれ、シアノバクテリアを含めて大量絶滅が起きたと推定されています。

五大湖の近くでは奇妙な石も1860年代に発見されています。これらの石は風や水で運べるほど軽くはありません。

これらは氷河の痕跡であり、21億年以上前に非常に広大な氷河があったことを示しています。

すなわち、大三化事件に続いてとても深刻な氷河期が始まり、赤道付近も含めて地球全体が完全に氷に覆われました。このスノーボールアース仮説は1992年に提唱されています。

24億年前から20億年前の間に大三化事件がきっかけとなり、地球上の全生物の99.9%が失われたと見積もられています。

生物が無事生き延びた場所は酸素という毒ガスの影響を受けなかった深海や、地球規模の凍結から逃れたごく一部の温暖な海岸線のオアシスのみです。

この大三化事件を生き延びたことで、後に酸素をエネルギーとして用いる現在のような動物や植物の誕生へとつながっていきました。