この世界を支配する“もつれ”

東京大学大学院理学系研究科・理学部 School of Science, The University of Tokyo
29 Apr 202114:33

Summary

TLDR量子もつれ(エンタングルメント)という現象が物理学の最前線で注目を集めています。80年以上前にアインシュタインをはじめとする物理学者たちが提唱し、量子力学の不思議な性質を示しました。今日、量子コンピューターの発展や物質の新たな状態の発見において、量子もつれは重要な役割を果たしています。特に、情報処理速度の飛躍的な向上や、物理学の深遠な謎を解く鍵としての可能性が期待されています。

Takeaways

  • 😀 量子もつれ(エンタングルメント)は、粒子が互いに即座に影響を与え合う不思議な現象であり、空間と時間を超越する可能性がある。
  • 😀 アインシュタインをはじめとする物理学者たちは、量子力学の完全性を疑っており、特に量子もつれに対して懐疑的だった。
  • 😀 量子コンピュータは、量子もつれを利用して、従来のコンピュータでは実現できない速度で計算を行うことが期待されている。
  • 😀 量子もつれの性質は、物質の新しい状態を創り出すために利用され、量子液体などの新しい物質の発見に繋がる可能性がある。
  • 😀 量子もつれは、ブラックホールのような宇宙の謎を解く鍵にもなると考えられており、物理学の最前線で大きな役割を果たしている。
  • 😀 量子の重ね合わせ状態は、粒子が同時に複数の状態を取ることを可能にし、観測することでその状態が確定する。
  • 😀 量子コンピュータでは、0と1の重ね合わせを用いることで、より効率的な情報処理が可能になる。
  • 😀 日本の慶應義塾大学は、量子コンピュータの研究を先駆けて行い、今後の発展が期待されている。
  • 😀 量子もつれによって、空間的に離れた粒子間で瞬時に状態が決定されるため、光速を超える情報の伝達が可能であると考えられる。
  • 😀 量子力学の進展により、物理学者たちは、私たちが住む3次元の空間が実は2次元の平面に記録された情報である可能性を探求している。
  • 😀 量子もつれの研究は、宇宙の成り立ちや、物質の最も深いレベルでの理解を進めるための鍵となる。

Q & A

  • エンタングルメント(量子もつれ)とは何ですか?

    -エンタングルメントとは、量子力学における現象で、異なる物体が空間的に離れていても、片方の状態を観測することによって、もう片方の状態が即座に決まるという不思議な現象です。物理的に離れた場所にある2つのコインが重ね合わさった状態にあり、観測することでその状態が同時に決まります。

  • 量子コンピュータはどのようにエンタングルメントを利用していますか?

    -量子コンピュータは、エンタングルメントを利用して情報の処理を行います。従来のコンピュータが0と1のビットで情報を扱うのに対して、量子コンピュータは量子ビット(qubit)を使用し、0と1の重ね合わせ状態で情報を表現します。エンタングルメントを活用することで、これまでのコンピュータでは不可能だった高速な計算が可能になると期待されています。

  • エンタングルメントが発見された背景は何ですか?

    -エンタングルメントは、アインシュタイン、ポドルスキー、ローゼンの三人の物理学者が1920年代に提唱した論文に基づいています。彼らは、量子力学の理論が完全であるかどうかを探る中で、この現象を発見しました。しかしアインシュタインはエンタングルメントの実現を信じられず、「神はサイコロを振らない」と反論しました。

  • 量子もつれが光の速さを超えるとはどういう意味ですか?

    -量子もつれの現象では、空間的に離れた2つの物体が瞬時に影響を与え合うため、情報が光の速さを超えて伝わるかのように見えることがあります。これにより、相対性理論における「光の速さは超えられない」という命題に対して矛盾するように思われたため、アインシュタインはその現象を認めませんでした。

  • 量子コンピュータの現在の進捗はどうなっていますか?

    -量子コンピュータは現在、まだ開発段階にあります。慶應義塾大学では、3年前から量子コンピュータの利用が始まり、現在は「幼稚園児くらい」のレベルにあると言われています。今後10年以内に、従来のスーパーコンピュータでは解決できなかった問題を量子コンピュータで解決できるようになることが期待されています。

  • 量子エンタングルメントを使った物質の研究はどのように進んでいますか?

    -量子エンタングルメントを利用した物質の研究は、未知の物質の状態を作り出すための重要なキーワードとなっています。例えば、冷却した電子のスピンが交互に並ぶ状態を作り出し、それが「量子液体」と呼ばれています。この研究は、10年前には困難だったが、今では実際に観察され、物理学の進展に貢献しています。

  • 量子液体とは何ですか?

    -量子液体とは、電子のスピンが上向きと下向きに交互に並ぶ状態が液体のように揺れ動く現象を指します。これは特に三角形の結晶構造を持つ物質で見られる現象で、量子エンタングルメントにより、電子同士が強く結びつき、特異な性質を持つ状態になります。

  • アインシュタインが量子もつれを否定した理由は何ですか?

    -アインシュタインは量子力学の不確定性を嫌い、エンタングルメントのような現象が「瞬時に情報が伝わる」と考えたことに対して強く反論しました。彼は、光の速さを超える情報の伝達が現実的ではないと考え、「神はサイコロを振らない」という有名な言葉でその不安定性を表現しました。

  • 量子もつれが物理学の研究に与える影響はどのようなものですか?

    -量子もつれは、物理学の様々な分野に革命的な影響を与えています。例えば、ブラックホールの研究や、私たちの三次元空間における現象が、実は量子もつれにより記録されたものだという理論が浮かび上がっています。これにより、量子情報と重力、時空の関係が解明される可能性が出てきています。

  • 量子コンピュータが解決する問題とは具体的に何ですか?

    -量子コンピュータは、現在の古典コンピュータでは非常に時間がかかる計算を、圧倒的な速さで解決する可能性があります。例えば、複雑なシミュレーションや暗号解読、物質の構造解析などの分野で、これまでの技術では不可能だった計算を高速で行うことが期待されています。

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